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館長の言葉

    西村 克也
未来から届けられた器 「 織 部」
桃山時代は日本の歴史の中でも、日本人ならではの心のこもった茶陶の名品が,、空前の規模で、創造的に華々しく誕生した時代です。

西暦1600年を挟んで前後20年のわずか約30〜40年間に(天正〜慶長時代)、彗星のごとく現れ、大阪城落城と古田織部の死(1615年)と共に忽然と消えていった幻の焼き物です。

その焼き物は志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部・美濃伊賀などの桃山時代の茶陶です。
美濃地方で生まれた、織部茶陶は、織田信長、豊臣秀吉この二人の権力者の意思と国策により華開いた焼物です。

しかし志野や織部などの桃山茶陶は、徳川時代は長い間ベールに包まれ歴史の舞台から消されておりました。

昭和初期になり、荒川豊蔵氏の美濃古窯発見によりORIBE茶陶の産地が美濃地方であることがはじめて明らかとなりました。

.その後、美濃茶陶の全貌が明らかになるにつれ、ORIBE茶陶は国宝「卯の花薔」志野茶碗に代表される、日本の陶器史上最高の名陶であるとの評価が下されるようになりました。

織部焼きの名前は美濃茶陶誕生の総指導者であった古田織部の名前から付けられたものです。

また、織部茶陶の美しさ、芸術性の高さは,世界の一流アーテイストやコレクターの審美眼に認められ、日本で再認識されるようになりました。

今では桃山時代の茶陶は日本の陶磁器史上不動の地位を確保しております。

織部焼きの作品は、斬新さ故、過去の焼物とは思えない、未来から届けられた焼物のような錯覚さえ覚えます。

作品に対面すると400年の時空を超え、作品から作家たちの自由な発想と真剣なメッセージが伝わってきます。

織部焼との出会い
私が織部茶陶の魅力にひかれ、強い関心を持つようになってから、早35年になります。美濃古窯跡には幾度か足を運びました。

また個人の収集家から美濃古陶ならびに常滑古窯、合わせて1万点近くの発掘資料を譲り受け、実地調査と学習の機会を得ることがきました。

また個人所有の伝世作品を見せていただく機会、並びに、古田織部の研究のご指導を受ける機会にも恵まれ、気がつくと自分の人生の半分以上を、「織部茶陶」の研究や収集に明け暮れていたように思います。

今は自分個人の使命として先輩から受け継いだ知識体験を還元すべく、浅学、微力ながら情熱を傾けております。

美術館開設の目的
桃山時代の茶陶作品は日本文化の至宝とも言うべきものと思います。このような公の宝(文化的財産)は一個人の所有物だけにすべきべきものではなく、公の財産として公開し多くの方に知ってもらうべきではないか、との考えに至りました。

ORIBE美術館は自らの収集作品と、ORIBE美術館の趣旨に賛同いただく方のご協力を得て、桃山江戸初期の織部茶陶を、常設公開展示し、また年に数回の企画展も開催しております。

地域の方々や愛好家の方々、そして日本の未来をになってくれる少年少女の皆様に、なんらかのお役に立てればと願っております。

織部美術館が将来、織部茶陶を通じ、桃山文化の発信基地の1つになれればと願っております。

桃山文化に触れていただくことにより、若い人たちが、自国の文化(歴史)を理解することは人格形成の上からも大切なことだと思います。

古田織部と美濃陶工の研究への取り組み

織部研究の第一人者である久野治先生は、30年間にわたり古田織部の研究をされてきました。久野先生は、現代の閉塞した激動と混迷と不透明に覆われた時代様相は、桃山時代によく似ていると言われます。

このような時代こそ桃山時代日本のルネッサンスを開いた、古田織部の独創的な発想、日本の伝統文化と向き合った、多様性と柔軟性に富んだ人間性豊かな知恵から、時代を切り開くヒントが得られると指摘されております。

またORIBE美術館では、古田織部と共に庶民のパワーを発揮し桃山ルネッサンスの扉を開き芸術家集団となった、偉大な美濃の陶工に光を当て、伝世作品の窯印や土地に残る言い伝えや古文書からその実態を明らかにし陶工たちの偉業を讃えたいと常々願ってきました。

その一環として日本に存在する伝世品の志野・織部、美濃伊賀、黄瀬戸などの桃山時代の美濃作品の作家を示す窯印のある作品(瀬戸6作・織部10作の作品)の研究調査活動を少しずつ現在進めております。

今までの調査で、所蔵者のご協力により、作品の窯印が少しずつ確認できております。みなさまの更なるご協力をお願い申し上げます。

ORIBE美術館開設に当たりましては、久野治先生、並びに織部香炉の展示にご協力いただきました神谷昭吾氏他、多くの方々にご指導とご協力を賜りました。この場をお借りして感謝とお礼を申し上げますとともに今後一層のご指導ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

みなさまのご来館を心よりお待ち申し上げております。
                                         ORIBE美術館 館 長  西村 克也









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